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 今年2007年、応用物理学会の機関誌「応用物理」が創刊75周年を迎えます。
 75周年記念事業の一環としまして、CEATECでは今後30年の応用物理界のこれから目指すべき領域と課題及びイノベーション−応用物理学関連分野を19のクラスター群に分類し、各要素技術クラスターについてアカデミックロードマップを作成し、新しい研究領域・融合領域を提言しました。ゴールを2040年に設定し、各ロードマップには社会ニーズ等トップダウンの視点からの議論も期待しています。
 このアカデミックロードマップは、「学」から「産・官」へ新しいコミュニケーションの場の形成、応用物理関連分野の魅力や将来ビジョンの提示、幅広い人材の育成などを目的としています。

未来を拓く応用物理分野における19クラスター

 応用物理学会は、物理学、材料学といった学問を基礎として、学術・技術における異なる分野間を融合し、新しい製品、産業を形作る役割を担っています。
  トムソンによる電子の発見やフランクによる量子論の提言から百年余りを経て、現代物理学は驚くべき発展を遂げています。応用物理学は、工学や真空工学を含めて数百年を超える長い歴史を有しますが、現代物理学を数十年前に生まれたトランジスタやレーザーなどの新領域が次々と開拓されており、いまや学術の広大な領域を包含する状況にあります。
 応用物理学の研究の多くは、原子、電子、電磁波の科学にとどまらず、人間の欲求や地球規模の情報・経済システムに関する学問までさまざまな学術要素と関係しており、それらの有機的なつながりの中で開拓されています。まさに、ナノ空間の物理現象を理解・制御し、社会や自然の要請にこたえる新しい総合的な技術体系が生み出されています。

未来を拓く応用物理分野における19クラスター
未来を拓く応用物理分野における19クラスター
人材育成
人材育成ロードマップ1

 現在、応用物理学会では科学技術を社会へPRしたり、大学と産業間で人材面や研究活動面などを中心に行われる、広範な交流活動−産学連携研究の推進、若手研究者や女性研究者の支援、教育現場での理工系への勧誘、理科の面白さの紹介などを行っています。
 今後30年間では、次代を担っていく科学者・技術者の裾野を広げると同時に、社会の理工系に対する意識改革と環境整備、ライフ&ワークバランス社会の実現を図っていく必要性があります。例えば、理工系卒業者の進路が技術者・研究者・大学教員などのアカデミア分野の狭い範囲にとどまらず、社会・経済・政治など多岐に渡る分野で理工系の要素と方法論を身につけた人材が活躍できる世の中が期待され、促進をはかる必要があります。
 そのために、10年後を目標に小中学生に対して科学の面白さや、社会や産業上での役割と重要性を次世代に伝えられる機会を促進します。また、若手研究者・女性研究者には、世界をリード出来る競争力やリーダーシップを身につけてもらいつつ、ステップアップしながら活躍できる環境を整備します。

人材育成ロードマップ2

 20年後は、理工系の素養を持った人が、性別・キャリア・国籍などに関係なく、例えば科学ジャーナリスト、弁理士、行政官、政治家などの多様な分野で活躍出来る体制と環境を整備 していきます。特に若手・女性研究人材の多様なキャリアパスを切り開くための男女共同参画社会の実現に向けた支援と環境整備を行います。また、大学教授などの指導的地位に就く女性の割合を25%以上にすることを目標とします。
 30年後には、多様性・流動性に富んだ人材の国際的活躍により、理工系出身者が社会のリーダー、経営のトップ、法律家、ジャーナリストなどを目指せる環境を整備します。

環境・エネルギー技術
環境・エネルギー技術ロードマップ1

 現在の生活を続けると人類はいずれ破綻してしまいます。今世紀環境・エネルギー問題で顕著に現れているのは「温暖化」と「資源枯渇」です。
 文部科学省が中心となってまとめている第3期科学技術基本計画の重要政策にある60の戦略重点科学技術の4割超の25が環境・エネルギー分野でした。
 応用物理学会で目指しているターゲットは、「無尽蔵の太陽光でつくる水素利用社会」です。脱温暖化のためにCO2排出量を2050年までに1/2、21世紀中に1/4以下(気温上昇2℃以下)を目指します。脱資源枯渇のためには、化石燃料と希少資源の代替・枯渇回避を行います。
  そのためには、電気自動車、家庭用燃料電池(給電給湯)、高断熱百年住宅などの一桁省エネ・省資源化(持続可能性・脱温暖化)、太陽光直接水分解水素の製造、低コスト太陽発電、バイオマスなどの自然エネルギー大規模利用(自然[再生可能]エネルギーデバイス)、電力貯蔵(二次電池)、水素貯蔵・輸送、熱電併給発電などのエネルギー利用の効率化(画期的省エネ技術)、量子・ナノ構造活用:Pt代替燃料電池触媒、高μ、ε材料などの希少資源代替・省資源材料(基盤技術[ナノテク、原子レベル設計、評価・プロセス])などが考えられます。

環境・エネルギー技術ロードマップ2

 高エネルギー技術(原子力、核融合)には依存せずに、持続可能社会は拓けます。しかし、環境・エネルギー技術は個別技術の改良だけでは、地球全体の問題解決は困難です。地球規模の定量的な目標「夢の技術シナリオ」への挑戦が不可欠となります。
 今後、応用物理学会では今回作成したロードマップを基に学会内外と技術横断的な協力を推進していきます。また、ナノ材料・デバイス面の革新を通じ、持続可能社会の実現に貢献していきます。

食糧技術
食糧技術ロードマップ1

 最近の農業、水産、畜産および食品加工などの食糧技術は数多くの科学技術に立脚しています。各分野においては、従来は経験や知識の伝達で段階的な改良を行ってきましたが、近年は先端科学技術の導入でイノベーションや品質向上を目指すようになってきました。特に、農業においては、植物工場における環境整序技術、水産においては海流の人工衛星による観測技術の導入、畜産においてはDNAセンサやプリオン検出技術による安全性の確保などがあります。
 また、食糧技術は、生産→流通→保存→消費→廃棄というライフサイクルからの考察も重要です。ライフサイクルの考察により、単に生産者と消費者の立場からだけでなく、流通や環境問題までを包含する視点から、科学技術の役割を広い視点から見ることができます。
 食品の品質に関する消費者視点では、個別の食品について科学技術の役割を見直すことが重要です。食品に特有の生産/プロセス技術、安全性管理技術、味覚管理技術、保存技術、加工技術があり、先端的なプラント技術に加えて計測技術が安全性を支えています。

食糧技術ロードマップ2

 さらに、特定の食品が食卓に到達するまでにどれくらいの環境負荷があるかという考察も重要です。この問題はフードマイレージ(量×輸送距離)の概念で考察できますが、本質的に環境負荷を減らしながら、健康で長寿を達成する食糧生産技術を研究開発することが重要です。
 以上の事項より、今後環境を考えた食糧生産システム−環境制御および環境調和技術、生産を安定させるための短期及び長期の気象予測技術・動植物の成長シミュレーション技術、などが発達するのではないかと予測され、安全でおいしいものを低価格、低環境負荷で、安定して供給できるようになると思われます。

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