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【美術・デザイン】
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  内田 あぐり 教授  
  文化庁在外研修員として渡仏。「裸体画100年の歩み展」「日本画の現代展」「具象絵画ビエンナーレ」「日本秀作美術展」「DOMANI・明日展」「現代日本絵画の展望展」「女はどう表現されたか展」「表現の磁場―日本画の現在」「The Scent and Shape of Ink」「日韓現代美術展」などに出品。中京大学アートギャラリー C・スクエア、平塚市美術館、日本橋高島屋などでの個展多数。日経日本画大賞、山種美術館賞大賞、創画会賞、ステーションギャラリー賞受賞。  
         
 
 「私は至極、普通な生き方をしているし、そういうことを意識してはいないのですが」と、おだやかな笑顔で辺りにやさしい空気を醸しだしてはいるものの、その作品は異彩を放っている。まるで情念を絵の具に溶かし込み、渾身のエネルギーで和紙の繊維1本にも塗り込めたような挑発的な表現で迫ってくる。
 内田あぐり日本画学科教授。
現代日本画壇を代表する女流画家のひとりである。
 日本画独特の伝統技法を継承しつつも、社会一般でイメージする花鳥風月や山水の概念を覆す「今に生きているんですから」をコンセプトに今の感性で日本画の表現を広げている。
 長い歴史を誇り、画壇に多くの作家を輩出してきた武蔵美ブランドの日本画学科は「学生の感性を尊重し、幅広い視野と深い造形思考をもった個性豊かな作家を育てたい」を柱にしてきた。内田あぐり教授も武蔵美出身である。武蔵美の日本画学科は「新しい波を作り出している」。アトリエにはそう感じさせてくれる風が吹いていた。 
  内田先生アトリエ  
         
内田先生作品
         
 
 
油の洋画と水の日本画
 
     

 ―― 先生自身が日本画を志すきっかけになったものは。

内田  こども時代から絵を描くのは好きで、高校時代は油彩をやっていました。当時の美術という教育は洋画一辺倒で、日本画はほとんど学校では教えてくれなかったのです。
  そんな時、たまたま教科書の1ページに小さく掲載されていた「風神雷神図」(俵屋宗達の至高の代表作で国宝)を目の当たりにして、目が釘付になったんです。白黒の印刷でしたが、衝撃的でしたね。素朴に「この線はどうなっているのだろう」「どうやって描いたのかしら」がきっかけで武蔵美の日本画の門をくぐることになりました。

 ―― 高校生ばかりか、一般にも最近の日本画と洋画の区別は難しいといわれますが、どこが違うのですか。

 
内田  江戸時代までは、日本には鉱物や植物 から得た顔料を膠で接着させる描法で描かれた日本絵画があり、伝統的に日本人の美意識の中で継承されてきました。明治になり西洋の油絵という、それまで日本では使われていなかった画材による絵が社会に広まります。これを「西洋画」と呼んだのに対し、従来の日本のものを「日本画」と区別しました。大別すると油の洋画と水の日本画になりますが、技法や描法は時代によって変化していくものです。
  画材の違いが技法に影響はしていますが、現在ではテーマやモチーフ、表現などで違いはないと思います。作家が何をどう描くかだけです。
  確かにひと昔前まで、世界の中でのJapanese Paintingの評価は浮世絵などと同様にドメスティックなものと思われていたかも知れません。

  しかし近年、才能豊かな作家による作品が国際的に評価されてくると、新たな日本画の魅力も注目されています。
 
         
         
 
 
伝統技法を修得したら次に「何を描くか」という、まなざしが大切になる
 
     

 ―― 日本画の第一歩は何から始まるのですか。

内田  日本画は、東アジアの伝統的な描法を受け継ぎながら数百年を経て今日に至っています。そこには合理的な技法や画材、用具なども進化し、時代の文化を吸収して表現を拡げてきました。
  入学時はまずこの奥深さに触れて欲しいと思います。 画材や用具、和紙などの特性が理解できたら、日本画独特の「線」の技法を学びます。線描はものの形を作る基であり、すべての造形の基本となるものです。初めに鉄線描(てっせんびょう)という一定の速度と太さを持った、針金のような厳しい線で植物を描きます。
    ここから、美しい岩絵の具の彩色やさまざまな技法の修得へと展開し、水と膠(にかわ)をベースとした日本画ならではの偶然に生まれる美しい点、線、面の魅力にもふれていきます。学生にとってはおそらく初めての経験で新鮮な感動を覚えるのもこの時でしょう。また、古典名画の模写や自然の写生、豊富でくり返し行われる人体デッサンも本学ならではで重要なポイントです。見たままを正確に写し取りながらも偶然の美を期待できる技法を約2年間で修得します。

 ―― 段階的に次に目指すものは。

内田  基本技法がマスターできたら各自の表現へと発展させなければなりません。3年次になると学生それぞれにまったく趣の違う作品が出現してびっくりすることも珍しくありません。こんなに素直な性格で可愛い顔をした女の子が、こんなおどろおどろした作品を生みだす力を持っていたのかなど、個性的な絵に出合うのが毎年の楽しみでもあるのです。
  表現の違いはあれ、すべてが日本画の技法ですから、若い感性で描かれた作品を見ていると、日本画の未来は明るいと思いますね。
 また、この時期になると「自分は何を見ているのか」「自分の描きたいものは何なのか」このテーマに向うことがとても重要になってきます。

 この視線の方向が作家としての道を作っていきますから。
 
         
         
 
 
若い才能の芽を伸ばしてあげる教育を
 
     

 ―― 先生の指導で特に留意されている点は。

内田  4年次になると、卒業制作に取り組みます。それまでの集大成となる作品に向かうわけですが、私は学生に技術的なことを手とり足とり細かに教えることはしません。学生といえども作家という自負もあるでしょうし、何よりも私の感性を押しつけることは才能ある学生の自由な表現の妨げにもなりますから。ここには、日本画の可能性をさらに拡げてくれる若い才能の芽が勢いよく育っています。
 私がいつもいいたいのは、表現者として作品と対峙する姿勢や主題の考え方や見る角度です。
 技術的には、キッカケやヒントを与えることによって学生自ら気づいてくれることに期待します。
 私の学生時代にこんなことがありました。ある先生が山の連なりを描いていた学生に対し、「これを参考に」と、そばにあった紙をゆっくりビリッビリッと破いて渡したのです。その切り口を見て学生はより自然な山の連なりを表現できました。
 
 ―― 卒業後の進路は。

内田  もちろん日本画の画家を目指して大学院へ進学し、表現者としてさらに上をめざし、作家活動をしてほしいと願っておりますが、ここで学んだ技術を生かしてビジネス社会で活躍している者も大勢います。 例えば、舞台美術、プリントメーカー、デザイン業界、教師などの道もあります。これからの時代、どの様な仕事であってもクリエイティヴィティが大切です。
 
         
         
 
 
才能ある意欲的な高校生を発掘、 育成する推薦入学制度
 
     

 ―― 20年度入試から日本画学科も公募推薦を導入しましたが。

内田  数は少ないのですが、20年度入試から自己推薦による(4名)入試を導入しました。表現者として将来性が期待できる才能豊かな若い人達を本学で発掘、育成していくためのものです。実技試験、作品提出と面接により決定しますが、意欲のある高校生や浪人生にはチャンスだと思いますので、ぜひ新たな制度を利用してほしいと思います。
     
         
     
 
内田先生がおすすめする高校生のための 「日本画の魅力に触れるスポット」
 
  MOA美術館・・・ 熱海にある美術館で尾形光琳の紅白梅図屏風をコレクションしている。毎年2月の梅の時期に公開。他に初期浮世絵の湯女図も素晴らしい。  
  国立近代美術館・・・ 東京竹橋にある美術館。近現代の美術コレクションが充実している。ここは必見。  
  山口蓬春記念館・・・ 神奈川県葉山にある日本画家、山口蓬春の自宅アトリエが公開されている。建物は建築家の吉田五十八氏によるもので、庭園も美しい。近くに鎌倉近代美術館・葉山館があり、ここの展覧会はとても面白いものをやっている。美術館から見える海の風景が素敵。  
  古梅園・・・ 奈良にある墨の専門店。ここで製造された墨など種類がとても豊富。事前に依頼すると墨の製造所を見学させてくれるかもしれない。  
  絵の具や・・・ 東京にある喜屋、得応軒、ウエマツ、横浜にある三吉、京都にある放光堂など。日本画の絵の具がガラス瓶に入って棚の上にずらっと並んでいる。日本画の絵の具はとても綺麗です。  
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