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  遺伝子レベルで人体の未知の可能性を探り、世界的規模で研究が進んでいる生命科学。このような時代の到来を予測し、国内ではじめて生命科学部を設立した東京薬科大学は、多くの研究者、技術者を企業や研究機関に輩出しています。新たな遺伝子の発見で世界的に注目されている分子生化学研究室の柳 茂教授にお話を伺いました。  
     
     
     
  柳 茂 教授  
  1992年福井医科大学卒業後、内科臨床医を経て、福井医科大学(生化学第二講座)助手。米国Yale大学に留学後、神戸大学医学部(生化学第一講座、現機能ゲノム学分野)助手、同助教授を経て、2005年から現職。2001年から科学技術振興機構さきがけ研究員を兼任。2004年日本生化学会奨励賞受賞。  
         
 
 
学生たちの知的好奇心を
駆り立てるゼミ。
 
     

 ―― ゼミの内容ついてお聞かせください

 ゼミでは学生たちの興味を惹くような、そして記憶に残るようなディスカッションや実験を自由な雰囲気の中で行なっています。
 この学部では医学系のカリキュラムも学べるので、医学、病気に興味を持っている学生が多くいます。なので、近親者が持っている病気を学生自身で調べて発表するとか、あるいはほかの研究室を廻ってもらい色んな研究を見てもらったりしています。
 
 私の研究室では神経発生を研究しているのでニワトリの受精卵を使って、肺や心臓の動き、神経が発生していく過程を見せたりしています。
 とにかく実験がしたいという学生が多いので、実験を見る、そして参加してもらうことを心掛けています。実験では血小板の精製の実験なども行なっています。

 新しいことを発見するということは、知識を詰め込む作業とはまったく違うものなのです。研究の世界では知識も不可欠ですが、それ以上にひらめきとフィーリングは非常に大切です。そういったものをゼミのなかで感じていってくれたらと考えています。
 
         
         
 
 
アルツハイマーやパーキンソン病
を治す注目の遺伝子「CRAG」
 
     

 ―― 教授は現在どのような研究に力を注いでいるのですか?

 基本的なメカニズムを見つけたり、新しい遺伝子の機能を明らかにしたり、またそれを治療に繋げることができるのではないかということを細胞レベルで証明する研究を行なっています。
  最近、私たちが発見したCRAG(クラッグ)という遺伝子を神経変性疾患のマウスに射ち込むとそれが治るという研究成果を発表しました。神経変性疾患というのは細胞のなかにゴミが溜まっている状態のことです。どこにどんなゴミが溜まるかによってそれぞれアルツハイマーやパーキンソン病を発症します。そのゴミを掃除する遺伝子がCRAGなのです。もともと神経変性疾患を研究しようとやっていたわけではなくて、神経ネットワークはどうやって出来ていくのだろうということを調べているなかでこの遺伝子を発見しました。胎生期から子どもの時に神経ネットワークというのはスクラップ&ビルド、壊れては作りあげるという作業を繰り返します。その際にゴミが沢山生じるわけです。その研究の中でゴミを掃除するCRAGを発見しました。
  これは特許を取って産業とも結びつこうとしています。いま非常に注目を浴びている研究です。意外な発想の転換でこの遺伝子が発見できたわけです。正常を知ることによって、異常を知ることが出来るのです。
 
 ―― ガンと遺伝子についても研究されているそうですが?

 全世界的にガンの研究には多額の研究費つぎ込まれていますが、3人にひとりはガンで亡くなっています。

  なぜかというとそこははっきりしていて原因は老化なのですね。老化というのは病気じゃなくて正常なのです。歳をとるとガンになるということは、遺伝子に傷がつくということなのです。遺伝子になぜ傷がつくかというと老化現象がそこにあるからです。
  たとえば、野生のマウスは2〜3年以内で死んでしまいますけど、人間が作ったマウスをクリーンな環境で育てたら5年か6年は生きることができます。けれども、最後はほとんどが、ガンで死んでしまいます。それが正常なのです。

  もし、老化を防ぐ再生医学が進んで、人間の不老不死が可能になったならば、どんなことが起きるかというと子孫を残す必要がなくなりますし、地球環境が変わったときに対応していけませんので、その種は絶滅すると言われています。不老不死はありえません。
  老いてガンになるということは実はポジティブで正常なことなのです。
 
         
         
 
 
遺伝子は努力にも関係する?!
 
     

 ―― 遺伝子と精神的な考え方にも 関係はあるのですか?

 精神の高次機能でさえも遺伝子レベルで決定されているのではないか、という考え方も出てきています。面白い話がありまして、努力も遺伝子ではないかという話もあるのです。
 もし遺伝子でそういったことが説明できれば「あなたには努力する遺伝子がない」ということで、この遺伝子と遺伝子を組み合わせれば努力ができるようになると。
 
 少し怖い話ですが(笑)、努力するというそういった基本的な行動ですら、遺伝子が制御している能性があるということなのですね。もちろん環境因子は大きいのですが、最近の研究では環境因子プラスそれ以上に遺伝子の持つ役割は大きいだろうという見方になってきています。

 将来的にはひょっとしたら、人間の心や性格といったものまで遺伝子である程度推測できるという可能性も秘めていますね。

 
         
         
 
 
独創的な視点を持つ研究者へ
 
     

 ―― 最後に研究者を目指す高校生へアドバイスをお願いします。

 将来、研究者を目指すにあたってどういったテーマを選ぶか、どういった発想を持って研究を続けていくかということを、大学の間に勉強していって欲しいと考えています。
 研究の世界で大事なことは創造力と独創的な意見を持つことです。
 高校までは仲間と意見や趣味は一緒でもいいですけど、研究者を目指して大学に入るのならば、人と一緒の意見では没個性で意味がない、という風に視点を変えていってほしいと思います。

 人と違う自分を見つけることが大切なのではないでしょうか。

 ―― ありがとうございました。
 
 
柳先生 授業の様子
 
少人数制でアットホームな柳教授のゼミ風景。
ゼミを受けているのは1年生
 
         

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