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  スポーツシーンにおいて、時には選手生命をも脅かす存在となる怪我。スポーツ医療の前線に立つ教授は、これらをいかに未然に防ぐかをテーマに研究を重ね、スポーツトレーナーを目指す学生たちに向け、教鞭をとる。  
     
     
     
  大久保 衞 教授  
  1979年大阪市立大学医学部大学院修了、医学博士。 1993年に同大学整形外科助教授。 1998年から、日本で有数のスポーツ医療機関(医)貴島会ダイナミックスポーツ医学研究所の所長となる。 2003年びわこ成蹊スポーツ大学教授。 2007年4月より副学長。 (社)日本整形外科学会専門医、同認定スポーツ医、(財)日本体育協会公認スポーツドクター。  
         
 
 
整形外科の臨床から
スポーツ医学の分野へ
 
     

 これまで主に整形外科の臨床、つまり実際に患者さんたちと向き合い、診療する現場の医師として活動し、また、運動器(骨、関節、靭帯、筋肉など)のリハビリテーション医としても経験を積んできました。
 そんな中で、スポーツ選手や重労働者の腰痛の運動療法について、故・市川宣恭先生(元大阪市立大学講師、大阪体育大学教授、整形外科医)のご指導で学会報告や論文を書かせていただきました。
 
また、運良くスポーツ用品メーカーとの共同研究の機会をいただいて、シューズやシューズの中敷の研究をしました。これは現在でも続けています。
 スポーツ傷害の発生には、筋力の強さや弱さが外界から受ける力学的衝撃に影響するなど、一定のメカニズムがあります。スポーツ現場に近いスポーツ大学では、設備とその他でまだまだ困難な課題は多いのですが、スポーツ傷害の予防という観点から研究をしたいと考えています。
 
         
         
 
 
スポーツ傷害の生の姿を
経験してもらえるような講義が理想
 
     

 講義の内容は、細かな医学用語は別にして、医学部の学生や卒業後間もない研修医に対する講義とほとんど同じものです。例えば、手術のビデオや画像は積極的に見てもらいますし、なるべくスポーツ傷害の生の姿を経験してもらえるような講義が理想と考えています。
 
 スポーツ医学の分野も日々発信される情報量は増加の一途です。もちろん講義する側の限界もありますが、限られた時間で伝えられるのは、自分の専門分野だけでもその何分の一くらいのものです。ですから講義を通して自ら課題を見つけ、自ら学んでほしいのです。
 その意味で私の講義では、スポーツ傷害の姿を追体験し、さらに勉強したい、もっと知りたい、これを予防するには、などさまざまなモチベーションを持ってもらえたら、その目的は半ば達成していると考えて取り組んでいます。
 
         
     
 
トレーナーに求められるものとは
 
     
   今も可能な限り時間を作って臨床の現場に関わり続けています。先の市川先生と大阪で始めた「ダイナミックスポーツ医学研究所」というスポーツ医療機関です。そこで数多くのトレーナー諸君を間近に見てきましたが、彼らに必要なのは、スポーツ傷害を抱え込んだ患者さんに対する日々の真摯な取り組み、これしかないと思います。
 そして、どこかに熱いものを持っていてほしい。スポーツとスポーツをする人々を愛する心とでもいうのでしょうか。
 ダイナミックスポーツ医学研究所のモットーのひとつに「笑いの取れるスタッフになれ!」というのがあります。
 傷ついた患者さんがにっこりしたとき、そのときこそ、トレーナーになってよかったと思うときではないでしょうか。
 
         
 
 
トレーナーを目指す
皆さんへのアドバイス
 
     

 現役トレーナー諸君に、「仕事でもっとも大切と感じることは何か」というアンケートをとったことがあります。予想に反して、第一位は礼儀・作法、そして同率で人間関係でした。いずれも90%を超えていました。第三位がこれも同率でトレーニング理論とスポーツ医学の知識で、それぞれ80%。以下先輩の指導や教え、リーダーシップ、スポーツ界の話題、語学、文化や歴史の知識と続きました。
 世の中のどの世界でも要求されるのは、やはり他者とのコミュニケーション能力です。スポーツ医学も例外ではありません。
 
 特に身体だけでなく、心も傷ついている人と付き合うには、まず人間が好きでなければつとまりません。その上で科学に裏付けされた知識と技術が要求されるのです。

 したがって、トレーナーとして一人前に働くには、卒業した時点では知識も経験も足りないのです。卒業すれば各種資格、例えば(財)日本体育協会の公認アスレティックトレーナーや(財)健康体力づくり財団の健康運動指導士などの認定試験を受験でき、卒業後すぐに合格する諸君もいるでしょうが、それはあくまでスタート地点です。そこから、さらに高い地平を目指し、目標に向かって歩み続けるスポーツマインド、この場合は粘り強く戦い続ける気持ちでしょうか。それを持ち続けてほしいと思います。
 
         

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