62023年から2024年のファッション産業は、多くの企業が増収増益を記録しています。海外事業も回復傾向が進み過去最高益を出しつつも、暖冬による気候変動の影響から主要アパレルの6割以上が在庫効率の悪化、また円安の影響から資材の高騰により、業績の明暗が分かれてきています。そのなかでファッション業界は、さまざまな変化が進行しており、以下のような新たなトレンドや価値観が生まれることが期待されています。 ① 持続可能性の重視近年の地球的規模で災害発生率が増加しているなか、環境問題への関心がより高まっています。そのため持続可能な素材や製造プロセスの採用が進み、リサイクル素材の使用やエコフレンドリーな製品開発に力を入れ、消費者もより環境に配慮した選択を求めるようになっています。 ② デジタル化、テクノロジーの進化によるビジネスモデルの変化オンラインショッピングやデジタルマーケティングの普及により、ファッション業界は急速にデジタル化が進行しています。バーチャル試着やAR(拡張現実)技術の導入により、消費者は自宅にいながらも新しい体験を楽しむことができるようになり、またAIやデータ分析の活用が進み、消費者のトレンドや嗜好を把握することで、従来の大量生産・大量消費モデルから、オンデマンド生産やレンタルサービス、リセール市場の拡大など、持続可能なビジネスモデルへのシフトが進んでいます。 ③ 多様性とインクルージョン(多様性の受容)の推進 ファッション業界では、多様性とそれを受容することが重要なテーマとなっています。さまざまな体型、文化、性別、年齢に対応したデザインやマーケティングが求められ、より多くの人々が自分を表現できるような環境が整いつつあります。 ④ ロイヤリティプログラムの活用近年、多くの企業では、顧客の忠誠心を高め、リピート購入を促進する戦略の一つとして、ロイヤリティプログラムを導入しています。その注目する経済効果として「推し活」ブームがあり、経済規模では約8000億以上が見込めています。ファッション産業においても「推し活」は新しい市場を生み出し、ブランドは新たな顧客層を獲得し、ファッションのトレンドを加速させる要因となっています。特に、特定のスタイルやアイテムが推しの影響で流行することが多く、これが市場全体に波及することが期待できます。若い世代の皆さんは新しいアイデアやトレンドを生み出す能力に優れています。またデジタルネイティブであり、SNSやオンラインプラットフォームを駆使して新しいライフスタイルやブランドを発信することができます。このような創造性は、ファッション業界において「新たな風」を吹き込む要素となり、日本独自の新たなファッションが創生されていくことを期待しています。一般財団法人日本ファッション教育振興協会事務局長青山学院大学卒業後、学校法人文化学園に入職。新卒次より就職関係部署にて学生支援、求人対応、インターンシップ等の就職支援全般に従事し、多くのアパレルメーカーと対応。その後、教務部門において授業関係、産学コラボレーション業務を担当。学務・広報部門では、職業実践課程への移行、日本人学生・留学生対応等に従事したのち、学園組織を再編に伴い専門学校、大学の就職業務を統合した「学園就職支援室」にて従事。ファッション系/アパレル系をめざす人へ吉野 真文さん「ファッション業界の新たな変化」
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