■バイオの世界の現状や今後について 2024年のノーベル生理学・医学賞はヒトの遺伝子発現を制御する「マイクロRNA」を発見した科学者に、そしてノーベル化学賞はAIでタンパク質の構造予測を可能にした科学者に授与されました。昨年が「mRNAワクチン」でしたから、最先端のバイオテクノロジーが人の健康と福祉に役に立っていることを証明していると言えます。また、遺伝子配列を読み取る技術が急激に進歩し、これにAIの技術が結び付けられ、病気の原因を推定し治療薬をリストアップすることが可能になっています。さらに現代に生きる人の遺伝子にネアンデルタール人の遺伝子が残っており、これが病気に掛かりやすい、掛かりにくいを左右することも明らかになっています。今後、ますますバイオテクノロジーが人の健康増進に大きくかかわるようになると思われます。■バイオ業界の将来性や可能性 地球温暖化に伴う気候変動が、農作物の生産に大きな影響を与えており、この急激な変化に対応できる作物の品種改良が今までよりも早い速度で求められています。ゲノム編集技術が気候変動に耐性があり新しい機能をもった農作物や家畜の開発に利用されていくことは確実です。また、再生可能エネルギーの生産にも、植物による航空燃料の生産など、様々な実用化が進んでいます。もはや生き物が持つ遺伝情報を調べることは、当たり前のことになり、SDGsの多くの部分において問題解決の手段として活用されていくことでしょう。■バイオの学びの魅力 動物や植物を育てていると、「生きている」とはどうゆうことなのか考えることがあると思います。目の前にある生き物が、目には見えない小さな細胞から出来ており、その中に、究極のマイクロマシンとして機能しているDNAやタンパク質があって、それを物質として取り出して研究できることは、ワクワクする体験です。新たに見つけた遺伝子配列を合成し、細胞に戻して働かせることもできます。生き物の神秘に迫ることがバイオテクノロジーを学ぶ大きな魅力です。■バイオ業界をめざす高校生たちへ バイオテクノロジーは、実験室でDNAやタンパク質を取り扱う技術と思われがちですが、材料として使う動物、植物、微生物などの生き物をきちんと育てる技術がなければ成り立ちません。自分の好きな生き物を徹底的に調べてみてください。そして、できれば育ててみてください。愛情をもって生き物を育てることがバイオテクノロジーの第一歩です。特定非営利活動法人 日本バイオ技術教育学会理事長あんざい ひろし▶日本大学生物資源科学部特任教授(農学博士)。軟体動物のセルロース分解酵素の研究で学位を取得し、海藻の食物繊維としての機能の解明、カブトムシ幼虫の消化酵素の分析から腸内細菌叢の遺伝子解析へと様々な分野で研究を進めてきたことが役立ち、2019年より特定非営利活動法人 日本バイオ技術教育学会理事長。4動物・自然・農業・海洋・環境・バイオ・化学・造園・フラワー系をめざす人へ安齋 寛氏身近になるバイオの世界
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