分野別ガイドブック No.9
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昨今は、医療に関するAI技術開発が活発化しています。現在の医療業界では医療従事者の偏在(地域によって偏ること)や地域医療など、さまざまな課題が山積みです。AIの活用によって医療の効率化を図り、そのような課題解決に向かう一歩として期待されています。開始し、鹿児島県南大隅町産の無農薬バジルに着目。これまでも同様の有効作用のある治療薬はありましたが、自然由来の物質を活用することで、安全な治療薬につながる可能性が期待されています。さまざまな変異株のコロナに対応ができるとしています。しかし、現在のままでは実用化には膨大な量のバジルが必要となるので、「課題を解決し、新たな地域産業につながることも期待できる」と期待を寄せています。無農薬のハーブをアルコールに漬けて薬酒にするなど、治療薬として活用する方法は古くから代替療法などにもありますが、天然由来の成分が治療薬に用いることができれば、安全性の面からも大いに期待ができそうです。基本的には海外に行き、治療や検診を受けることが一般的な医療ツーリズムですが、日本では国内向けに医療ツーリズムを推進しているところがあるようです。長野県のとある村の診療所とリゾート施設運営会社、宿泊施設が連携し、観光をしながら健康を維持できる医療ツーリズムとして、血液透析治療を受けている人に向けた「長期滞在型臨時透析プラン」を考案。村内での多くのアクティビティやグルメを楽しみつつ、透析治療を受けられるほか、ホテルでの長期滞在も快適に過ごせるようにあらゆるタイプの宿泊施設を用意しています。このように診療所と宿泊施設が連携することによって、安全性を担保しながらも長期滞在で観光を楽しむことができるようになります。現在は関東エリアの一部の病院に通う患者のみの受け入れですが、今後は順次提携先の病院やサービスを拡充していく予定だそうです。─ 13 ─血液透析治療は、自宅でも行える「在宅血液透析」が注目されており、医療機関へ通わなくて済むメリットから、今後は訪問専門の医療従事者も増えるかもしれません。昨年のノーベル化学賞を、関連する研究が受賞したことで注目される“AI創薬”。AIを使って開発された薬はすでに、臨床試験にまで進んでいます。AIは、たんぱく質の構造などを分析し、わずか1時間ほどで6万種類もの薬の候補となる化合物を提案。アメリカで、この薬を健康な人に投与する臨床試験の第一段階を始めています。製薬会社役員は「AIが提案してきたものは熟練の研究者でも思いつかないような構造をしていた。まだ標準治療がない難病疾患はたくさんあり、創薬を加速化するために、AIを使っていきたい」と期待を寄せます。医歯薬・看護・福祉・医療系の近未来AIによる創薬や医療サービス支援、国内向け医療ツーリズム、コロナ治療薬最前線シリーズ こう変わる医療データをAI解析し医療支援サービスをめざす2024年6月、ソフトバンクグループは、医療データをAIで解析する事業をスタートすると発表しました。AIと精密医療のリーディングカンパニーであるアメリカの会社Tempus AI, Inc.と合弁会社を設立し、数年以内に医療の支援サービスの開始を目指すとしています。内容としては、分子、臨床、病理、医療画像といった、さまざまな医療現場のデータを収集し、AIが解析して治療法の選択肢を提示するサービスとのことです。ハーブの一種からコロナウイルスに有効な成分 天然由来の治療薬開発へ新型コロナウイルスの増殖を抑制する物質を、ハーブの一種である「ホーリーバジル」から発見した、と2024年11月、鹿児島大学理学部の濵田季之准教授らの研究チームが発表しました。濵田准教授らは、農作物を治療薬につなげる研究を2023年度に医療ツーリズムを国内向けに拡充へAI創薬のスピード感で難病治療が加速注 目 の 新 産 業

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