学びのすすめNo.3_2026
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35理工系大学の最新ニュースをキャッチ! 学部・学科の関連情報もあるよ!八戸工業大学らが開発、排熱利用の製氷装置食品輸送と省エネに役立てる京都橘大学のすだちで学生がポン酢開発気軽に使える、個性と学びの活きた味に「今から電車に間に合う?」調べる手間を解消大阪電気通信大学の学生が制作した電光掲示板日本獣医生命科学大学の新たな研究機関人と動物を取り巻く良質な環境の追究を図る 2024 年 5 月に八戸工業大学は、東京電機大学・高砂熱学工業と共同で、ごみ焼却時などに排出される熱を回収してシャーベット状の氷(氷スラリー)を作るシステムを開発しました。このシステムは、排熱で温めた温水から氷点下の冷熱を製造する「吸収冷凍機」と、その冷熱で水から氷スラリーを作る「氷スラリー製造機」からなり、八戸工業大学は前者の開発を担当しました。 吸収冷凍機は、水が蒸発するときの気化熱で冷熱を作る仕組みです。このとき使うのは 1─プロパノールというアルコールが加えられた水で、氷点下の温度でも凝固しにくく、安全性が高いことが特徴です。この装置で作った氷点下の冷熱は「氷スラリー製造機」で使われ、氷を安定的に製造できます。 このシステムは排熱の有効活用に拍車をかけ、製造した氷スラリーも食品輸送時の保冷剤として使うことができます。元々排熱の利用機会は限られ、冬の暖房利用のほかは、そのまま廃棄されることも少なくありませんでした。この排熱を冷熱に変え、保冷剤作りに役立てることで、年間を通じ無駄なく使うことができます。また、氷スラリーは通常の氷よりパイプで簡単に運べ、かつ食品を傷つけずに鮮度を保つこともできます。 研究チームは 2030 年度の同システム実用化を目指し、2029年までに実証実験を計画しています。まずは工業地と漁港が近接する八戸港湾部で実施し、工場の排熱で氷スラリーを作り、魚の輸送に役立てる見込みです。 (参考:八戸工業大学 HP) 京都橘大学の学生団体が、構内に実ったすだちでポン酢を作り、2025 年 1 月からは一般の方々にも向けた 100 本限定販売を行いました。この企画は 2023 年度に始まった「たちばなファームプロジェクト」の一環であり、学生たちはすだちの収穫から商品のプロデュース・PR 活動まで熱心に取り組みました。 同大学構内では、梅やすだち、かりん、ざくろ、タチバナ、たけのこなど、季節ごとにさまざまな果物や野菜が豊かに実り、併設のこども園や地域イベントにも提供されています。収穫物を活用し、キャンパスへの愛着や地域とのつながりを一層深めるために、このプロジェクトが始まりました。 今回売り出されたポン酢は、多忙な大学生も手軽に使える味を目指し、プロジェクト初年度の配合を改良したものです。従来よりも酸味を和らげたあっさりとした味になり、ドレッシングや調味料などにも使える「万能調味料」に仕上がっています。また、プロデュースにおいては「商品の認知度向上」も課題とされました。学生たちは大学祭で来場者に試飲を求め、得られた意見を反映したレシピを作る・SNS で情報発信を行うなどして、ポン酢の個性や魅力が伝わるよう PR を行いました。開発されたレシピは購入者向けのリーフレットで閲覧することができます。 経済学やマーケティング、心理学の知識を活かした PR など、参加学生自身が学ぶ分野を活かせる場面も多く、学びを通して地域活性化に貢献できる機会となったようです。(参考:京都橘大学 HP) 大阪電気通信大学プログラミング研究会の 3 年生 2 人が、寝屋川キャンパス最寄り駅の電車の運行情報掲示板を開発し、2024 年 10 月半ばに学内に設置しました。 掲示板には、京阪本線寝屋川市駅発の電車の時刻と遅延情報が、京阪電車の許可の下、リアルタイムで表示されます。インターネットから取得した情報を整形・表示するだけでなく、「歩いても間に合います」「早歩きなら間に合います」など歩く速さも分かるよう、プログラムが組まれています。見た目も駅の電光掲示板に寄せた、シンプルで情報を得やすいものです。 開発者 2 人が着想を得たのは、同じサークルの友人との会話でした。普段から「学生に役立つものを作りたい」と考えていたところ、同じサークルの仲間から「大学から電車に間に合うよう、時刻表や遅延の有無を調べるのが面倒だ」と聞きました。それを受け、スマートフォンで調べる手間を省けるよう、視認性・分かりやすさにこだわってデザインしたといいます。歩く速さまで分かるようにしたのも「どのくらい余裕をもって出るべきか」という学生の判断を助けるためで、実際に歩いたり走ったりして時間を測ったそうです。 開発期間は 4 週間程度、製作費はモニター含め 1 万円程度とコンパクトな仕上がりながらも、学内では好評で、SNS 上でも話題を呼んでいます。開発者 2 人は、今後はさまざまな意見も基に、改善を続けていく意向です。 日本獣医生命科学大学は、「人と動物が健康で幸福に暮らすことのできる共生社会の実現」を目標に掲げ、2025 年 1 月 1 日付けで「ワンヘルス・ワンウェルフェアセンター」を開設しました。 同センターには 3 つの部門が設置されます。1 つ目は、飼い主の支援やペット業界の健全化などを通し、身近な動物との健康で幸福な暮らしを目指す「伴侶動物部門」。2 つ目は、飼育環境や技術の向上・人獣共通感染症対策などに配慮した、良質な動物資源の生産を目指す「産業動物部門」。3 つ目は、希少種の保護や動物園の環境改善などを軸に、動物と安心して共存できる環境を研究する「野生動物部門」です。これら 3 つの部門は、研究活動の支援と社会への発信を通し、公的機関や団体・市民との連携や支援を受けるためのものです。 また、同センター名は、同大学が重要視する考え方に由来します。「ワンヘルス」とは人と動物の健康、そして環境をひとつと捉える考え方です。「ワンウェルフェア」はそこから発展して、人と動物の福祉も環境とつながり、相互に連動しているとする考え方です。 同大学は今までもこれらの精神に基づいて、セミナーや研究・教育などを通し、獣医学の可能性や飼育環境の改良方法を追究してきました。家畜の育成技術から災害時の動物避難など、テーマも多岐にわたります。センターの設置によって、今後は学内外での更なる連携と、目標に掲げた「動物との健全で幸福な共生」の達成が期待されます。 (参考:日本獣医生命科学大学 HP)(参考:PRTIMES)NEWS & TOPICS

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