分冊9 25年1月トンボなし
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各国の先進事例として、アメリカや中国には海軍所有の病院船がありますが、日本にはまだありません。2011年の東日本大震災後に導入が検討されましたが、莫大な建造費が懸念され、見送られました。昨年の能登半島地震のように、港の地盤が隆起して接岸できないというケースもあります。しかし、コロナ禍を経てその後も毎年のように大規模災害が発生し、南海トラフ地震への備えという観点からも「病院船」の建造が再び議論され、法整備が進められています。島国の特性を生かした新たな医療機関へ議論2024年10月、北海道室蘭港で民間のカーフェリーを活用した実動訓練が行われました。「DMAT」(災害派遣医療チーム)などに所属する約30人の医療従事者が参加し、フェリーに救急車が乗り入れる流れなどを確認。結果を踏まえ、政府は、2024年度内に出動や活動の手順をまとめています。このように、当初は民間のカーフェリー(はくおう、さんふらわあ、ナッチャンワールドなど)を活用した病院船(脱出船、診療船など)の運用を想定(写真参照)しています。─ 18 ─2024年7月、当時の岸田首相は船舶活用医療推進本部の初会合で「予算の確保、海外の先進事例を含めた知見の収集、災害対応の人材育成にも取り組んでほしい」と指示しています。石破政権も「防災庁」設置に向けて準備が進む中、病院船が災害時だけでなく、島国の特性を生かし、新たな医療機関として平時も運用するなどの本格始動が叶えば、病院船の建造とともに専門の医療人材がさらにクローズアップされ、将来的には医療従事者の働き方も変わるかもしれません。(参照:読売新聞、日本経済新聞、内閣官房資料ほか)災害時医療の切り札「病院船」運用へ 2025年度始動で準備進む政府は2025年度から、災害時などに海上で患者を治療・運搬する「病院船」の運用に乗り出します。震災など大規模災害が発生した際、入院患者の搬送やけが人の治療を行い、現地の病院を支援する役割も担います。民間カーフェリーを活用した実動訓練

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