伝統校同士の統合の背景には、高まる「医工連携」の重要性があると言われています。検査・治療用機器が高度化する医療現場において、医療と理工が協力し、より良い医療サービスの創出だけでなく、未病を発見して健康寿命を延ばすなど、人々の生活の質向上といった新たな価値創出もめざしているのです。東京科学大学以外にも、静岡大学と浜松医科大学など、医歯薬系学部と工学系学部を擁する大学の統合が検討されています。コロナ禍を経て、私たちの周辺でもオンライン診療などの新しい医療サービスが始まりました。また、マイナンバーカードを健康保険証と一体化させた「マイナ保険証」は、顔認証による本人確認ができ、患者が同意すれば過去の診察記録や投薬記録などを医師が確認できるため、より正確な情報から治療方針を決定できるなどのメリットがあります。今後はマイナ保険証の普及によって、医療従事者の事務作業が大幅に軽減されることも期待されています。そのほか、 医療機関とエンジニアリング企業が協力して開発したウェアラブルデバイスが、心拍数や血圧などのデータをリアルタイムでモニタリングする仕組みを提供。これにより、─ 19 ─患者は自分の健康状態を把握しやすくなり、病気の早期発見につながっています。さらに、医療研究所と工学部門が協力して、ナノ粒子を用いた薬のターゲット配送システムを開発しました。この技術により、薬剤が必要な部位に直接届けられるため、副作用が減少し、治療効果が向上しています。医師の業務でも、高度な医療機器を用いた遠隔手術や、高速インターネット5Gを活用した専門医による画像診断や手術の助言(画像が鮮明でタイムラグがないため正確な助言が可能)や、学会へのオンライン参加など、効率良い働き方にも不可欠な医工連携は、今後ますます進んでいくでしょう。(参考:東京科学大学(Science Tokyo)WEBサイト、ToppuRei ほか)医工連携は大学教育の場でも進むより良い医療と人々の幸せをめざして2024年10月、東京医科歯科大学と東京工業大学が統合し、新たに「東京科学大学(ScienceTokyo)」が誕生しました。両大学とも各々の専門分野では伝統ある国立大学です。「『科学の進歩』と『人々の幸せ』とを探求し、社会とともに新たな価値を創造することをめざすとしています。
元のページ ../index.html#19