皆さんの周りを見回してみて下さい。小さな子ども達のいる家庭の多くは共働きの家庭ではありませんか。皆さんが将来、自分自身の家庭を持った時、男性女性を問わず子育てしながら仕事を続ける気持ちではありませんか。ご両親の世代の頃から比べても、出産や育児を経験しても仕事を続ける人の比率はますます高くなっていき、就学前の低年齢の子ども達の殆どが日中は保育所やこども園などで過ごします。そして、その場所は単に生活の場というだけではなく、正しい生活習慣を身に着け、人として育っていくために有益な経験や知識を培っていく大切な場です。さらに最近では各家庭での保育を支えるだけでなく、それぞれの地域での子育て支援センターとしての役割も期待されてきています。 それにもかかわらず、全国的に保育士の不足が続いており、保育所の運営に支障をきたしている事例が多数見られます。 保育所で行われる保育は「養護」と「教育」から成り立っています。子どもの豊かな成長を育くむと同時に、幼稚園と同等の教育を提供しています。これは単に家庭における親の子育て機能の代替補完ではなく、子育てに関する専門知識と経験を活かしたプロの仕事です。子ども達と接する中で、様々な遊びや活動を通じて子ども達の状態を五感で感じながら、発達段階に応じた適切な支援指導を提供することが大切です。職場の仲間とのチームワークも欠かせません。このように保育は、自分自身も可愛い子ども達と共に成長しながら、子どもや子育て家庭を支える、楽しくやり甲斐ある仕事です。それだけに責任も重く、不断の勉強や研修も必要となります。また、近年は保育士の重要性が広く認識されて、給与など処遇の改善も着々と進んでいます。 コロナ禍で知れ渡りましたが、保育施設での子育てが行わなければ、病院の看護師さんや介護施設の職員も勤務を続けることはできません。保育はまさに社会として必要不可欠の役割を担っており、その社会的評価も一層高まりました。 少子化は今後も避けられず、数少ない現役世代が大勢の高齢世代を支えていくことになります。その将来を担う人材を健やかに育んでいくとともに、今働いて世の中を動かしている世代の生活を支える保育の世界に飛び込んで、活躍していただけることを心から期待しています。─ 3 ─社会福祉法人日本保育協会理事長東京大学法学部卒業。1976年(昭和51年)厚生省入省。雇用均等・児童家庭局長、医政局長、厚生労働審議官等を経て、2014年社会福祉法人日本保育協会理事長に就任。2018年より神奈川県立保健福祉大学理事長。保育事業や保健医療の発展、改革に尽力。保育・教育・福祉系をめざす人へ大谷 泰夫 さん子ども達、そして子育て家庭を支える心豊かな仕事
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