分野別ガイドブックNO.4
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公益社団法人日本介護福祉士会 会長長崎県生まれ。株式会社かいごラボ 代表取締役。一般企業に就職し、結婚出産を経て病院のケアワーカーとなる。その後老人保健施設で10年、特別養護老人ホームで12年・施設長としても10年勤務した後、独立し、2019(令和1)年8月に株式会社かいごラボ設立。静岡県介護福祉士会理事を経て会長就任。現在公益社団法人日本介護福祉士会会長。 台所に立つホームヘルパーの私の後ろを、何度も行ったり来たりしている女性は、とうとう下着姿になって、浴室に消えていきました。お風呂に入って、湯をかける音が何度も聞こえてきます。 この女性は長い時間浴室から出てきません。繰り返し、繰り返し頭を洗っては流し、体を洗っては流しています。「お食事ができましたよ。」とお声をかけ、「すぐ出るわ。」とお返事があり、やっと食卓につかれます。 重い認知症の方は今考えたことを忘れてしまいます。今行った行動を忘れてしまうのです。私たちホームヘルパーは、繰り返し行う行動を見守って、気持ちに寄り添いながら、お声掛けします。 「そう、あなたのお子さんは大学生なの。一番お金がかかる時期よね。」「もう少しの辛抱だから、がんばりなさい。」と、人生の先輩であるこの女性は、私たちのことを気遣ってくださいます。 私と私の仲間は、ホームヘルパーとして、この女性のお宅を毎日訪問させていただき、この方の在宅生活の継続のため、身体状態、精神状態、認知機能の変化、食事量等、様々な角度から見守ってまいります。ご家族の方のご心配や、困りごとを時々お聴きしながら、「その人らしく生きていただくため」の打ち合わせも繰り返してまいりました。 私たちは、この女性の、食欲、歩行状態、皮膚の状態、衣服の汚れ方、薬の飲み忘れなどを、調理をしながら、掃除機をかけながら、情報収集していきます。 介護のしごとは、専門的な視点をもってご利用者の多くの情報を収集します。医療職や、リハビリ職の方々等と情報交換しながら、お一人お一人の生活の継続や、生活の質の向上を目指しています。施設での介護も同じです。在宅での生活が難しくなった方々が、施設の生活の中においても、「その人らしく生きていただくため」に、様々な問題を解決しながら、生活を支援しています。 私は介護福祉士という国家資格保有者です。多くの方々の生活を支援してまいりました。 お一人お一人の生活が同じではないように、ご利用者様に行う介護も違ってきます。 多くの思考を繰り返します。多くの答えを導き出します。目の前のご利用者様の笑顔が多くなることや生活の質が向上する為に、精一杯検討します。だからこそ、この仕事が面白く、やりがいを感じられるのです。 読者の皆様には、まだまだ考えられないことだとは思いますが、老いは誰にでも訪れます。突然障がいをもつことも考えられます。私が大好きな介護のしごとに興味を持っていただきたいと、願います。─ 4 ─保育・教育・福祉系をめざす人へ及川 ゆりこ さん「魅力ある私のしごと」

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