分野別ガイドブックNO.9
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 新型コロナウイルス感染症の拡大によって、有効なワクチンや飲み薬などの入手が急務とされましたが、日本は後手に回りました。長年にわたり、日本の製薬会社によるワクチンや新薬開発に消極的だったためです。創薬とは本来、短期間で開発できるものではありません。膨大な資金も必要となります。ワクチンや治療薬を国内で開発し、生産できる能力をもつことは、国民の健康維持のみならず、今や外交や安全保障の観点からも重要になっています。このため、長期的、継続的に取り組む国家戦略として、ワクチン開発と生産体制の強化が昨年度に閣議決定されました。資金面など国を挙げて支援を行うほか、東京都や経団連をはじめとした経済界も創薬ベンチャーの企業を支援すると表明しています。 ワクチンや新薬の開発が活発になると、ワクチンや医薬品の製品化に向けたCRC(治験コーディネーター)の活躍が欠かせません。CRCは分析データを集めるために採血などの検査業務が必須となることから、看護師や臨床検査技師の有資格者が担っています。病院勤務ではない医療従事者の新たな働き方が期待されています。 薬剤師をはじめとした医療従事者の就職先として、ドラッグストアの事業進化が始まっています。たとえば美容室を併設し、カウンセリングを行って商品を試したり、併設カフェは地域の憩いの場として、高齢者医シリーズこう変わる療や妊娠出産の女性への情報発信に療や妊娠出産の女性への情報発信にも活用されています。日常生活におも活用されています。日常生活における健康情報の発信という点では、「予防医学」がキーワードとなる、理学療法士や作業療法士も活躍の場が期待されます。ストレス&睡眠市場の拡大と免疫力向上で健康寿命を延ばす 腸内環境を整えることで、健康力をアップさせる研究が進んでいます。ストレスによる睡眠不足に効果を発揮したり、免疫力を高めることで感染症を予防できるというものです。高濃度の乳酸菌やユーグレナ(ミドリムシの一種)が食品として製品化され、その効果が公表されています。病気治療が目的ではないものの、「未病」(健康と病気の間にある状態)の観点から、健康を維持するための食品やサプリメントが人気を呼び、競合品の中には高額にもかかわらず、生産が追い付かない商品もあります。超高齢社会では「予防」「未病」と「医療」との結びつきの中から、新しい産業が生み出されます。世界一の長寿大国・日本でも男性9年間、女性12年間は誰かの世話を受けなければ生活できないという統計もあります。医療知識や技術が、健康寿命を延ばす「予防」「アンチエイジング」につながるという研究が今後も進みますので、注目していきましょう。─ 13 ─創薬支援の本格化と創薬支援の本格化とCRCの活躍CRCの活躍医歯薬・看護・福祉・医療系の近未来注 目の 新 産 業IT企業によるIT企業によるオンライン診療等の運営支援オンライン診療等の運営支援 昨年秋、大阪の総合病院がサイバー攻撃に遭い、長期間診療だけでなく外科手術も行えない事態となりました。新型コロナウイルス感染症を経て、医療現場では診療のオンライン化などのDX(ITによる社会変革)の推進が求められていますが、総合病院のサイバー犯罪対策だけでなく、小規模の医療現場では実際の導入に課題もあるようです。そこで、IT系企業が医療のオンライン化に次々と参画し、運営支援への取り組みが始まりました。たとえばオンラインで予約して診察を受け、処方薬も宅配で届くというワンストップサービスの取り組みなどです。さらに、マイナンバーカードの健康保険証一体化が進めば、利便性が高くなると期待されています。今後はパンデミックが起きても医療現場がひっ迫しないよう、さまざまな知恵と異業種の支援が始まっています。ドラッグストアの複合事業店舗化が進む新薬・ワクチン開発に関連する事業が拡大医療機関以外での活躍の場が広がる

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