分野別ガイドブックNO.9
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 高校での進路選択は「人と関わる仕事がしたい」というのが希望でした。小学生で短期入院を経験し、看護師の方にやさしくしてもらった印象が強く残っていたこともあり、家族とも相談して東京の看護大学を受験しました。看護大学の受験科目は大学毎に異なり特殊な形態をとっているので、過去問題を数年分しっかり解きながら出題傾向を分析し、対策を立てて毎日勉強したことが合格に近づいたと思います。看護実習では現場の看護師に指導を受けながら初めて患者さんと関わり、今の実務に直結する学びを体験できました。グループで行動し一緒に学びながら、一人では辛いことも日々のディスカッションで共有し、先生方や相談できる仲間の存在に助けられて乗り越えることができました。 看護師として当センターに入職後、先ず感じたのは、“責任感の違い“です。学生の実習は患者さんのケアなど寄り添うことが中心でしたが、投薬や病状を知ることも重要な役割となりました。しかも一人で昼間は最大7名、夜勤では10名以上を看るため優先順位を考えながら時間単位で行動しなければなりません。初めは、目前の業務に取り組むことで精一杯でしたが、毎日少しずつ知識や経験を積み、今では勤務を開始する時点で一日の流れを把握し、優先順位を考えながら動くことができるようになりました。 新型コロナウイルス感染拡大のニュースが始まって間もなく、当センターでは一度に複数の感染者を受け入れることになり、私の所属する病棟が新型コロナ感染症の専用病棟になりました。感染対策を行ううえで、今までの業務フローでは対応しきれないことが次々起こったため、看護師長をはじめ経験豊富な先輩方を中心に、皆で新しい仕事の方法や業務内容などの調整を行い、これまでのルーティーンを変えて業務にあたりました。初めは「何が正解かわからない状態だった感染対策」ですが、院内の感染対策本部とも連携し一つひとつ確認しながら皆で意見を出し合い、感染が拡大しないように努めました。デルタ株の感染拡大時は若い人でも重症化する現実に直面し、ベッドを増やしても満床が続いて毎日が災害現場にいるようでしたが、これまでの経験から徹底した感染対策を行い、対応することができました。その経験を新型コロナ専用病棟以外から支援に来てくれるスタッフに対しても伝え、正しい感染対策が徹底できるよう自発的にサポートし、院内の感染対策に取り組みました。 看護師になりたい!という思いから、実際に看護師として働き始めるとそのギャップに気づき、初めは大変に感じることがあるかもしれません。先輩や同期と支えあいながら、まずは一通り仕事を覚えるまで頑張り、苦難を乗り越えることができれば、次第に視野が広がって患者さんとの関わりから自分自身の看護観に気が付く時がくると思います。そうすれば忙しさの中にも「楽しさ」や「やりがい」がみつかるでしょう。看護師に興味のある高校生は「こうあるべき」と気負わず、自分らしい働き方を見つけてみてください。─ 5 ─愛知県出身。大学卒業後日本赤十字社医療センター入職。呼吸器内科、外科、耳鼻科、眼科の混合病棟勤務ののち、2020年担当病棟が新型コロナウイルス感染症専用病棟になり感染症看護の最前線で従事。2022年7月より血液内科病棟勤務。入職6年目。日本赤十字社医療センター看護師(日本赤十字看護大学看護学部卒業)人と関わる仕事に興味を持ち看護師の道へ担当病棟が突如「新型コロナ専用病棟」に業務フローを再構築し 院内感染を防ぐ看護師に興味のある高校生へ巻頭メッセージ 業界で活躍するプロフェッショナルから高校生の皆さんへ栁澤 茉優 さん医療の最前線で「楽しさ」や「やりがい」を持ち、自分らしく働く

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