武蔵野美術大学VS多摩美術大学 両大学OB対談!! 第1回

第1回:「ムサビ×タマビの2人が美大に入るきっかけと理由は?」

平成5年から(株)さんぽうでは、多摩美、武蔵美、女子美、の三校合同の進学相談会を新潟で初めて開催しました。実技試験の合格作品を展示する進学相談会は毎年大盛況で、現在では全国23会場で開催するようになりました。

この美術・デザイン進学相談会を各地で開催する中、それぞれの大学のブースで美術・デザインを希望する高校生にひときわ熱く語る二人と出会いました。自分の大学のことだけではなく、美術・デザインの分野がどんなに興味深いか、どれだけ社会に影響を与えているかをその二人から気づかされました。二人の共通点は、それぞれの美大のOBで広報担当をしていることです。ライバルだけど仲がいい。

今年のはじめ、ある埼玉県の高校で美術科の高校生を対象とした進路説明会があり、その二人と話をしているとき、「対談をしたら面白いね」ということになり、今回実現しました。一般的には「ライバル」と思われている2つの大学、実はそれぞれを認め合う「同志」であり、同じ大学から分かれた「兄弟」でもあります。両学の「名物広報担当」であり、公私とも仲の良いお二人に、「ムサビとタマビ」、「美大とは」、「入試で求められている資質とは」など、さまざまなテーマで、熱く語り合っていただきました。他では絶対に見られない、夢の「ライバル校対談」。3回シリーズでお送りします。

美術の先生の影響で美大受験することになった二人

ムサビ×タマビ 美術の先生の影響で美大受験することになった二人

さんぽう  米山さんは何がきっかけで多摩美に入ったんですか。

米山  2浪時代です。たまたま中学時代の美術の先生に出会って、そこではじめて美大を知りました。もともと法学部とか経済学部とか偏差値順でしか大学を見てませんでしたから、美大の話を聞いてとてもショックでした。偏差値って何なんだろうって感じで。真面目さが裏目に出て何かにとらわれすぎていたんだと思うんです(笑)。かなり多くの大学受験に落ちていましたから気分的にもまいっていたかな。周りはみんな先行くし。もう12月だったんですが、美大の存在がとても新鮮に思ったわけです。高校時代から絵を描くことなど一切関係ない生活をしていたので、実技試験がない多摩美の芸術学科を知った時は、なんか受験できることが嬉しかったのを覚えています。

さんぽう  手羽さんは武蔵美ですがどうでしたか。

手羽  恐らく美大生の王道パターンだと思うんですけど、小中高校と学年で1、2位くらいの絵がうまい子だったんです(笑)。小学校の頃、文集カットでドラえもんを入れることになって当然自分に役目が来ると思ったら、先生が違う子を指名して、あれはすごく悔しかったですね。そこで初めて描くことに対する悔しさを味わって(笑)、ずっとイラストや漫画を描いてました。そして中学の大好きな美術教員が武蔵美出身で、そこで「東京の武蔵美」という美術大学の存在を知り、高3の春に「絵が好きだから美大にでも行くか」と思いたちました。でも、地元の小さい絵画教室に行ったんですが、それまでは学校で1番だったのが、30番ぐらいなんですよ。あれは衝撃を受けましたね。

さんぽう  お二人に共通しているのは美術の先生の影響ですね。

手羽  中学や高校の先生の存在って大きいと思いますよ。逆に高校の大嫌いな美術の先生が多摩美出身だったんで、多摩美は受験さえしませんでした(笑)。高校生の情報レベルなんてそんなもんですよ。芸大っていうのは美大を引っ括めた総称だと思っていましたから、「芸大受ける」と言って親に驚かれた記憶があります。

米山  高校の現場は、美術の授業が減ったり、そもそも美術の専任教員も少ないのが現状ですよね。だから私たちが高校生の背中を押してあげたいと思っているんです。

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ハチクロと現実の美大は違う?

ムサビ×タマビ ハチクロと現実の美大は違う?

さんぽう  高校生で美大生をテーマにした話題の人気漫画「ハチミツとクローバー」を見て受験したい子っていますか?

手羽  想像されているよりいないと思いますよ。「美大」という選択があることに気付くきっかけにはなってるだろうけど、それ以上でもないんじゃないかな。そこから現実を見つめ直して、それでも夢中になれそうだったらそれずという感じで。きっかけは何でもいいのではないでしょうか。高校の説明会に行った時は「君たち、ハチクロのような世界は一切ないよ」って言いますし(笑)

米山  「ハチミツとクローバー」をよく見ていないから何ともいえませんが、話を聞いた限りだと、そこでは表現されないことが現実の美大にはいっぱいあって、違う意味でもっと面白いところだと思いますよ。

さんぽう  手羽さんに言われて現実の厳しさを実感ということでしょうか。でも夢のある漫画ですよね。

手羽  美大出身者からすると、リアリティのある漫画ではないんですけどね(笑)。でも、美大って言うのは将来、美術・デザインの世界で何かしら関係していきたい人物が集まるところでもあります。将来何がしたいかある程度決め、覚悟がないと入れない。そういう人が集まっている環境って実はすごいことであり、漫画によって少しでもそういう世界があることを知ってもらえればいいですね。

米山   実際、美大生たちはとても謙虚ですよ。美大は課題も多いですし、とことん自分を追い込んでもいく。自分で汗を流しているから、まだまだ一人前でないことも自覚している。自己主張も強いのに、遠慮気味なところもある。そういうギャップがとっつきにくい人とか、変わった人となることもあるかもしれませんね。(笑)けれどもそういう人材が未来を創っているのも事実です。アートの現場では当たり前と思われるかもしれませんが、産業界を見渡したとき、一般大学が輩出した人材と美大が輩出した人材を比べたら、その人材の違いがとてもよくわかると思うんですけど。これは優劣を言っているわけではないですよ。

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美大を卒業したらどんな仕事をするの?

ムサビ×タマビ 美大を卒業したらどんな仕事をするの?

さんぽう  美大卒業して企業に入ったらある程度のポジションは決まっちゃいますよね?

米山  美大生は目的もって学んでいますから、やはりやりたかった仕事につく努力はしますよ。基本的にはクリエィティブな職種につきます。企業からの求人もそういうものが圧倒的です。しかし、何を学んでいようが、その人の器量やキャラクターによっては、経営に携わることもあるでしょうし、営業のような仕事で力を発揮する人もいますよ。誰だって社会に出てからも出会いはあるし、生き方が変わることはあるでしょ。

手羽  一般大学を卒業して大企業に入ると、社長と会話できるまで何年かかるかわかりません。でもデザイナーの場合だと、いきなり社長にプレゼンすることもあるんです。実は同じ社員でも違う階層、違うカテゴリにいける可能性はありますね。

さんぽう  クリエイターは表現能力の他にある程度プレゼン能力というか、説明する力も必要になってくるということですか?

手羽  武蔵美の「デザイン情報学科」はその考え方が強いですね。絵が描けなかったら、絵を描ける人に描かせればいいじゃないかっていう発想。何を伝えたいのかを考え、相手に説明できれば写真は写真のプロに、文章は文章が得意な人に書いてもらえばいいと思いません?でも、「まずは自分でやってみる」というのが大前提で、そのデザイン情報学科でもタイポグラフィーの授業では0. 何ミリの単位で文字を配置する授業をしています。

米山  本当にプレゼン能力は必要ですよね。その魅力に気付かせること、また納得させることができなくてはなりませんから。大学ではそういうこともカリキュラムに入っています。しかし、プレゼンだけうまくて、肝心の作品のクオリティーがなければ将来なかなか一流にはなれないと思います。まずは作品あってのプレゼンではないでしょうか。ちなみに多摩美は毎年アメリカのアートセンターカレッジオブデザインと「PacificRim」というプロジェクトを行っています。そこでアメリカの学生と交流があるんですけど、彼等はとにかくプレゼン能力が高い。多摩美の学生もとても刺激になっている。けれども考えを具体化し形にするのは日本の学生の方がパワーあると思います。そういう能力を開花させ初めてディレクションの能力もついてくるんではないでしょうか。伝えようとしても実感がないところに説得力はないですからね。

さんぽう  企業側もそれほどの人材を求めているんですか?

米山  先生方からよく聞く話ですが、どんなに大学で勉強しても、実際仕事をしなければデザインスキルは身につかないと言いますね。裏返せばデザインスキルは社会に出れば身につくということでしょうか。では、大学時代に何が大切なのかだと思うんです。先ほど話にあったプレゼン能力も重要です。当然いろいろなスキルも知識も重要です。誰かに教われるようなことは順序だってどんどん身につけてください。大学でもそういうものはどんどん提供しています。しかしそれ以上に大切なことは、個々のクリエィティブな能力に磨きをかけ、圧倒的な表現力を身につけていくことではないでしょうか?こういう土台がなければ、どんなスキルや知識を身につけても意味がないと思います。企業も我々美大に期待している力はこういう力だと思うんです。そつなくできるだけでは新しい価値観を生み出せないですよね。

手羽  「美大に入ってイラストを教えて欲しい」という気持ちでいる受験生も多いと思いますが、今米山さんが語った意味、そしてどういうレベルの授業をやっているかはここでいくら説明するよりもオープンキャンパスに参加した方が理解しやすいはずです。ムサビは最高の美大だと自負してるけど(笑)、ムサビの雰囲気が嫌いな人もやっぱりいます。でも、合う合わないがあるのは仕方がないことだと思ってますよ。

米山  それは同感です。やはり、まずはオープンキャンパスで学生やアトリエなどの雰囲気を肌で感じてもらいたいですね。美大もいろいろありますよ。言葉にならないような各大学のカラーってありますよね。

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プロフィール

手羽イチロウ氏プロフィール
  • 手羽イチロウ氏
  • 武蔵野美術大学造形学部
    彫刻学科卒
  • 企画部企画広報課在職
  • 福岡県出身
米山建壱氏プロフィール
  • 米山建壱氏
  • 多摩美術大学美術学部
    芸術学科卒
  • 企画広報部企画課在職
  • 静岡県出身
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