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高校生イラストコンテスト2019 最優秀者インタビュー vol.3

③美術・アートなどのこと

――未来のアートの予感ということですが、今、先生がお考えになっているアートの定義はございますか。

横山 それはもうはっきりとあるんですが、ようするにビジュアルが魅力的であればそれはすべてアートであると。ミロのビーナスも、新海誠のアニメも・・・。魅力的なビジュアルに人の視線が集まればそれは全てアートであるっていう、美術部の活動の中で僕はそういう定義です。

――ありがとうございます。今の定義を聞いて何か思うことがあれば皆さんから一言ずついただきたいんですけど。(笑)

一同 えーっ(笑)

上野 ビジュアルって大事ですよね。やっぱり、きれいなものって人は好きだと思うんですけど、きれいなだけじゃなくって、ちょっと変だな、みたいな、なんか違和感、みたいな。そういう感じを含めてのビジュアルの魅力っていうか。見た目も大事なんですけどその見た目がある中には本質っていうか、やっぱりそういうところをいつの時代も観ないといけないのかなって思います。

山田 例えばミロのビーナスとか、昔のもの、昔の人が描いたものって、今見てもすごくいいなって思うことがあったり、逆に、時代背景とか、美術史で学ぶ絵とか、あまりわからないなっていうのも、わたしにはあったりで。でも、目が引きつけられるものとかをよく見て、そういうのを勉強することが、これから、美術をしていく上でとても大事だとあらためて思いました。

片神 時代背景とか、意味とか本質とかの話にも繋がるんですけど、例えばゲルニカだったら、戦争っていう背景があったじゃないですか。時代に残る絵っていうのは、そういう意味とかを作者が込めているものだと思うので、やっぱりそういうビジュアルになると。そして、結局、ビジュアルが目立たなければその意味を知ろうとも思わないので・・・。なんだろう(笑)。うーん、そうですね、要するに、ビジュアルって、意味を知ろうとする上でも重要なんじゃないかなって。

――みなさんすごくはっきり意見をまとめて発言していますが、やっぱり普段から美術部の活動とかでこういう意見のやりとりとかをしているんですか。

横山 本校の場合、美術科には鑑賞の授業があるんですよ。日頃から美術史を皆さん学んでいます。

――だから色々とはっきり意見や感想をきちんと述べられるんですね。ところで先ほど本質という言葉が出ました。本質っていうことをどういうふうに捉えようとしていますか。

上野 やっぱりそこはビジュアルだと思うんですけど・・・。本質・・・。それについてどう思っているのかは、人によっても違うと思うし、時代とかでも変わると思うし、それを表現するのってすごく難しいと思うんです。だけど、アートとか、芸術って言われるものって、別になくても生きていけるじゃないですか。でも、人が芸術を求めているってところに意味があると思うし。だから、その、本質をあらわそうっていうのが、芸術だと思うし。それは、要するに、見る人に、少しでも楽しみとか、いいなって、そういう気持ちを与えるっていうことじゃないかなって思う。本質っていうとちょっとすごく難しいんですけど・・・。でも、人を楽しませるっていう、基本的であり根本的なことはやっぱりいつでも大事にしたいなって思っています。

弥栄高校

――この分野を何と呼ぶのが適切なのか私達もしばしば悩んでいます。実際のところ、美術、アート、クリエイティブ、色んな呼び方があってなかなか一言であらわせませんが、それに取り組んでいる皆さんからすると、その名称についてどんな風に感じているのか、よろしければちょっと一言ずつでも考えを聞かせてもらえますか。

上野 美術、アート、クリエイティブってなんか似ているようで、たぶんちょっとずつ違っていると思うんです。クリエイティブっていうのは、何もない状態、ゼロから1を作りだす仕事で、それにはすごい労力が必要で、すごく大変なんですよ。何もないところから、その、自分の思うこととか、そういうのを形にするってすごく難しくて。でも、その1あるものを10にするっていうのも、それはそれで大変なんです。ゼロを1にするのと1を10にするのでは、その、似ているようで違うし、だからそういうところですかね。クリエイティブっていうのはゼロから1を創りだすものづくりなんです。で、アートは・・・、アートもクリエイティブに近いかな・・・。

――日本語と外国語の違いはありますけど、そもそもが同じ意味とも言えない部分もあるし、使っている側のイメージの変化も起こるし、言葉についての印象をまとめるのって難しいですよね。ちょっとむちゃぶりしてしまいました(笑)。この分野で使われる言葉にどんなイメージがあるのか、あるいはこだわりがある表現でもよいので聞かせて下さい。

山田 わたしはイラスト。イラストって、人によって全然違っていて、弥栄高校に入ってからも、クラスの子の絵とか、すごく見るんですけど、39人いて、全員ほんとに違っている。たぶん、描き方とか、その、イラストに対する考え方とか、みんな違うと思うんです。さっき、上野さんが言ったみたいに、ゼロから創るっていうイラストもあるし、そうでないものもあるし。イラストの見方とか、描き方とか、好きなものを描くとか。ものづくりっていうのが自分にはすごくしっくり来ている。描き方とかほんとに全員違うから。アートって言葉は、自分であんまりよくわかってなくて。ただ、さっきの上野さんの言葉とか、すごく納得できて。自分では、ものづくり、1から創るとか、そういうのがイラストにも当てはまっていると思いました。

片神 美術って言うとなんか、個人的にはすごく限定的な意味だというイメージがあって、アートっていうとなんか、幅広く感じる、っていうのはあります

――皆さん、失礼いたしました(笑)でも非常に興味深い話を聞くことができました。昨年末に日本有数のIT企業の方と話しする機会があったのですが、その時、社長や役員の人たちの話を、デザイン部門の人が原稿を作ったり、代わりに話をすることが多いと聞いたのです。説明を一方的にするのではなくて、どこにどういう話を配置するのか、何を狙うのか、どういう言葉を使うと一番伝わるかを考えられるのが、デザイン部門の人達だということだったのですが、こういう話を聞いて何か思うことありますか。実は皆さんとお話ししていて、皆さんの話ぶりに同じような感じがする部分があって。それで聞いてみているんですけど、いかがですか。

上野 デザインって、広告とかポスターとか色々作ると思うんです。デザインって、人のために何かをするっていうか。人のために何かを配置したり、形を作ったりとか。そういうのがデザインの仕事かなあって思っていて。画家とデザイナーって違うじゃないですか。画家って、どっちかっていうとなんか自分をのためっていうか、自分を満たす、何かを探して絵を描いているみたいなイメージをわたしは受けているんですけど、デザイナーって、その自分の作ったものが、何かしらの形で人と関わるじゃないですか。だから、デザイナーっていうのは、人に何かを伝えるとか、人のために何かをするっていうのを仕事にしてるし、考えてるから、その、配置もそうですけど、なんか人に話したりとかするのがうまいんじゃないかなあって、思います。でも、今の時代だと、コミュニケーション能力とかっていうのは、別にデザイナーだけじゃなくって、社会で生きる上で、誰もが必要だと思うので、そういう意味だと、デザインと職業とか社会って繋がりが深いなって、今、思いました。

――そうなんですね。先生いかがでしょう。アート系とデザイン系とでは、またちょっと違う毛色なのかもしれませんが、そのあたりをどうお考えなのかお聞かせください。

横山 先ほどの続きになるんですが、魅力的なビジュアルに人の視線が集まれば、まあ、それだけでもいいんですけど、人に何か伝えたいものがあるとき、伝えたいって気持ちだけじゃ人に伝えることはできませんよね。魅力的なものを作って人の視線を集めれば、多くの人にメッセージを伝えることができるわけです。そういうことをやって人の歴史が築かれてきたのかなって、例えばフランス革命の時の風刺画のように。僕は人の視線を集めるってのは人の未来の歴史を創る力、変える力だと思っているんですよ。
魅力的なものがアートであって、伝えるために色や形の組立て方を工夫するのがデザインだとしたら、両方できるようになったら素敵ですよね。

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