小論文は、論説文やレポート、論文などといった説明的文章の一種です。説明的文章とは、特定のテーマに対する書き手の主張を、読み手に説明する文章のことです。そして、主張を説明するためには、なぜそう考えるか、なぜその内容が正しいと判断したのかを、客観的な根拠を挙げながら、順を追って説明しなくてはいけません。このように筋道を立てて述べることを「論じる」といいます。自分の考えを、根拠を基に論じることは小論文の必須条件です。
ちなみに、小論文の多くが社会的な出来事を出題する一方、作文ではあなた自身について表現することが求められます。しかし、与えられたテーマに対して答えを示し、そう考えた理由を述べる点は作文も小論文と同様です。
小論文 | 項目 | 入学試験や入社試験の作文 |
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論理的と客観性を備える | 文章の特徴 | 効果的であれば情緒的でも可 |
使えない(文章の評価を下げる) | 表現技巧 | 効果的であれば可 |
根拠を基に主張を述べる | 書く内容 | 自分の経験・感想を基に考えを述べる |
常体(「だ・である」調)に統一 | 文 体 | 常体(「だ・である」調)か 敬体(「です・ます」調)どちらかに統一 |
序論・本論・結論 | 段落の機能 | 内容のまとまりを明確にする |
小論文は、自分の考えを論じる文章であることが分かりました。小論文試験では、そのような文章を課すことによって、物事を考える力や、考えたことを客観的に、論理的に表現する力などが評価されます。ここではそれら3点を、小論文を書くためのポイント①~③として紹介します。
大学や短期大学、専門学校は、知識や技術を身に付けるだけでなく、自身で研究テーマや方法を定めて、その答えを探求していく場所です。自ら課題を探し、答えを考える力は、課題解決力として就職後も求められます。では、自ら考える力が小論文においてどのように問われるのかを見ていきましょう。
例えば、「若者言葉についてあなたの考えを論じなさい」という設問があるとします。「~について論じなさい」だけでは何を論じるべきか漠然としています。そこで必要になるのが、与えられたテーマに対して疑問を持ち、解き明かしたい問題を設定すること(=問題提起)です。解き明かすべき問題を設定することが、設問への答えを考える軸になります。
(1)テーマの整理:知っていることや疑問に思ったことを挙げ、テーマに関する情報や考えを整理する。
Q1「若者言葉」とはどんな言葉だろう? |
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「若者の流行語」/「若者らしい言葉や言い方」 とされる言葉 |
Q2「若者言葉」の具体例や意味は? |
具体例:「やばい」、「おこ」、「まじ卍」、「んご」、「~しか勝たん」、「ぴえん」・・・など
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Q3「若者言葉」に対してどんな意見・評価がある? |
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(2)問題提起:整理した内容の中から、解き明かしたい問題を考える。
Qテーマに対する知識や疑問点を基に、何を問題にするかを決められないだろうか・・? |
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⇒ 若者言葉には広く普及したものも多く、頻繁に用いられている。 ⇒ よく使われる一方で、言葉として「乱れている」など否定的に捉えられる。 ⇒ なぜ、若者言葉が否定的に捉えられるのか考えてみよう。 |
(3)主張を決定:設定した問題への答えを考える
⇒ 若者言葉には、娯楽のための言葉であること、また意味が広いという特徴がある。
⇒ 「まじ卍」などのように言い回しを楽しむ言葉には、会話を楽しむ効果はある。
⇒ しかし、仲間内で使う言葉なので、相手や状況によって違和感を生みやすい。
⇒ また、「やばい」は意味が広く使いやすいが、言葉選びの負担がないため語彙を増やす機会を奪う。
⇒ このような問題点を伴うことが、若者言葉に否定的な捉え方をもたらしている。
ここまでは下準備ですが、この過程で書くべき内容の大部分は決定します。書き出す前の段階で、何を問題にし、どう答えるかを徹底して考えましょう。ただし、問題提起の仕方は与えられたテーマによって異なります。今後、設問文の分析方法はSTEP4の「出題形式とテーマを分析しよう」で、そして考えた内容をどのように組み立てるかは今回の下準備を例にしてSTEP5の「プログラムを作ろう」で学習します。
小論文を書く際には、よく「客観的に」論じているかが問われます。では「客観的」とは何か、その対義語とされる「主観的」と合わせて調べてみましょう。
「客観的」=「自分だけでなく、だれの目にもそのように見えるようす」
「主観的」=「自分だけの見方にかたよるようす」
(『三省堂国語辞典 第七版』)
つまり、「客観的」とは、個人的な見方ではなく「だれの目」からも共通する見方を意味することが分かります。新聞などで報告されるような「事実」があてはまるかもしれません。この点を踏まえて、以下の文A・Bの下線部のうち、どちらが客観的かを考えてみてください。
A.〇〇氏が当選する。なぜなら、たくさんの票を集めているからだ。
B.〇〇氏が当選する。なぜなら、過半数30票を超える45票を集めているからだ。
Aの「たくさん」は、人によって捉え方が異なる主観的な表現です。一方、Bの「過半数30票」、「45票」という数値は、個人の捉え方で揺らぐことがない事実です。つまり、客観的なのはBです。このような、客観的な事実を根拠とすることで「〇〇氏の当選」に説得力が出ることが分かります。
「論理的」であることも小論文において問われるポイントです。まずは、「論理」の意味を確認します。
「論理」=「ある事実から、当然、次の事実が言えるという、話しのすじみち」
(『三省堂国語辞典 第七版』)
この内容だけで理解するのは難しいかもしれません。ただし、文章を書くことに置き換えれば、文と文の内容が矛盾なくつながっていること、といえるでしょう。まずは、以下の例文を見てみましょう。
A地球温暖化の原因は、温室効果ガスの濃度が上昇していることだ。B温室効果ガスの約7割は二酸化炭素であることが分かっている。Cよって、地球温暖化の対策として二酸化炭素の排出量を抑えることが必要だ。
ここでは、A「地球温暖化の原因=温室効果ガス」、B「温室効果ガス=7割が二酸化炭素」、C「二酸化炭素排出量を抑えること=地球温暖化の対策」というように、前の文で述べた意味を引き継ぎながら次の文へと議論を進めています。こうしたリレーのように切れ目のない意味のつながりが「論理」です。
仮に、この例文から二文目(B)を除いて読んでみてください。すると、「地球温暖化の原因」は「温室効果ガス」にあるとして、なぜ「地球温暖化の対策」として「二酸化炭素の排出量を抑えること」が出てくるのか分からなくなります。このように、論理の順序が追えていないことを「論理の飛躍」といいます。述べていることが飛躍しないよう、文のつながりを意識して文章を組み立てましょう。
評価基準 | 表記部分 |
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内容部分 |
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小論文では複数の採点者が同じ受験生の答案を採点し、全員の評価を総合して合否を決定します。複数名の採点によって偏った評価にならないようにするためです。
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