教授に聞く、この学問の魅力

東京工科大学 デザイン学部
視覚デザイン専攻[視覚伝達デザインコース/視覚情報デザインコース]

 「デザインを学んでみたいけど才能がない……」と、デザイン分野に興味を持ちつつも、クリエイティブな進路をあきらめかけている人はいないだろうか。
 そんな人たちにお届けしたいのが、東京工科大学・デザイン学部の伊藤学部長と伊藤准教授からのお話だ。デザインは、論理を身につけた人材が幅広く活躍できる道であり、むしろそういう人材こそが、社会から求められているという。
 理工系総合大学でデザインを学ぶことのメリットや自分の物事に対する考え方、関心などと照らし合わせて、おふたりの話を読みすすめてほしい。

伊藤 丙雄学部長

伊藤 丙雄学部長

東京芸術大学美術学部大学院形成デザイン専攻修了。文化女子大学短期大学部生活造形学科准教授を経て、2010年4月、東京工科大学デザイン学部着任、2019年4月より現職。専門分野はグラフィックデザイン全般、古生物の復元画など。

伊藤 英高准教授

伊藤 丙雄学部長

武蔵野美術大学造形学部卒業、金沢美術工芸大学准教授を経て、2011年4月、東京工科大学デザイン学部着任。専門分野はメディアアート、インタラクティブアートなど。

ロジック(論理)を学び、社会に役立つデザインを考えていく。

ロジック(論理)を学び、社会に役立つデザインを考えていく。

実社会と遜色ない学びの環境

東京工科大のデザイン学部の特色をお教えください。

伊藤学部長 デザインというと、感覚に強く頼るようなイメージを持つのではないでしょうか。本来、デザインはロジックで考え、語っていけるものを前提としています。本学は理工系の総合大学だけに、エンジニアリングの発想にもとづいたデザイン教育を実践していることが特色です。
 もうひとつの特色は、実際に社会で起こっている事柄を学びの場に反映させ、より実践的な教育をするという考えです。つまり実践的なデザインを学ぶわけで、まさに実学ということです。授業の中で頻繁にプレゼンなどを行う機会を設けており、中でも「グループワーク」は目標を立てプロジェクトを進める、実社会と遜色ない内容です。実社会と変わらない経験を積み、自信をつけながら4年間学んだ先に確かな将来があると示すことが、本学の在り方だと思っています。

実社会と遜色ない学びの環境

不特定多数の人々に向けた「伝達デザイン」
大量のデータや複雑な情報を可視化する「情報デザイン」

コース選択についてお聞かせください。

伊藤准教授 3年次の前期から視覚デザイン専攻は「視覚伝達デザインコース」「視覚情報デザインコース」のふたつに分かれます。1・2年次でデザイン表現に必要な基礎を「感性演習」「スキル演習」で固めていくので、自然とどちらかを選択できると思います。
 「視覚伝達デザインコース」は印刷物、デジタルサイネージなどの媒体にタイポグラフィ、映像などの専門的な知識と技術を学び、不特定多数の人々へ出来事や考え方を伝える視覚デザイン表現を身につけます。一方の「視覚情報デザインコース」は、複雑な情報や大量の情報を可視化し、ウェブなどを通して個々のユーザーが実感・体験できるようなデザインを提案するのが主題です。身近な例を挙げると時刻表。時刻の羅列だけでは分かり難いですから、色分けしたり、図形を変えて分かりやすくする。それが情報デザイン手法のひとつです。こうしたものを表現するためにユーザーインターフェイスなども学びます。
 本学のシラバスはHP(https://kyo-web.teu.ac.jp/campussy/)上で閲覧することが可能で、授業概要、到達目標をきめ細かに開示しています。本学を志望されるみなさんも、どんな授業が行われているのか、参考までにぜひ見ておいてください。

不特定多数の人々に向けた「伝達デザイン」

高校生「情報Ⅰ」の必修化で新たな構想

今年度から高校で「情報Ⅰ」が必修化しますが、その準備などは?

伊藤准教授 高校生の「情報Ⅰ」のひとつの指針として『文系理系を問わず、情報活用能力を国民的要素として身につける』ということが読み取れます。理系じゃないからプログラミングは必要ないということではなく、誰もが基本的な素養としてプログラミングを身につけましょう、ということは非常に良いことだと思います。
 情報Ⅰの内容はかなり広範囲で、細分化されている印象です。中には本学部1年次の必修授業とリンクする部分もあります。情報Ⅰでは、「情報デザイン」という項目も含まれていますし、『情報科学的な見方、考え方』を重要視しているところも共通しています。情報Ⅰでデザインに興味を持った高校生のみなさんでしたら、よりデザイン的な方向性で知識を深めていくことができるでしょう。
 授業内容として考えていることは、最初はごく一般的な身近な情報の事柄に目を向けて、観察やリサーチ、またはグループディスカッションなども踏まえて情報の視覚化につなげていければと考えています。
伊藤学部長 高等学校の科目「情報Ⅰ/コミュニケーションと情報デザイン」の教材は非常に良くできています。大学では、デザインの魅力に気付いた高校生に学びの場を設けることが務めと思っています。
 共通テストに情報Ⅰが入ってくるのは2025年。現在、デザイン学部でも新カリキュラムの構想に着手しています。

高校生「情報Ⅰ」の必修化で新たな構想

学生たちの意見を反映した、新たな対面・遠隔併用授業

コロナ禍での授業体制はいかがですか?

伊藤准教授 1年目は試行錯誤しながら遠隔授業メインで進めてきました。2年目は対面・遠隔の併用と教室の分散。隣同士の教室に学生を分けてそこをオンラインでつなぐなど、ツールも色々と試してきました。それでノウハウを蓄積できたという面があります。また、学生の反応を調査すると併用授業の評判は上々で「もっと会話がしたい」「同期生が何をやっているか知りたい」という意見も収集できました。今年度から学生の意見やこれまでのノウハウを反映させた、新しい形の併用授業を行っていきます。
伊藤学部長 講義は何とかなるんですが、デザイン学部の授業は7割が話し合いの伴う演習授業です。どうしても対面で行える授業と行えない授業が出てきてしまうのですが、そこが工夫の発端になったと思っています。

学生たちの意見を反映した、新たな対面・遠隔併用授業

些細な気づきができる人、社会の先駆者を輩出

高校生へメッセージをお願いします。

伊藤学部長 デザインを学ぶ際に、アートの知識や持って生まれたセンスは求めておりません。また入学前の専門的なトレーニングより、入学してはじめから学ぶことを推奨しております。デザイン先進国ではデザインを一般的な科目である「社会科」で学ぶ仕組みが構築され、そのことからも、学部では高等学校までの教科を学習する習慣を大切にしている皆さんをお迎えし、デジタルスキルと感性を融合した学びにより、新たな領域を開拓する社会の先駆者を輩出したいと思っています。
伊藤准教授 あまり人が興味を向けないところに気づける人が、デザイン学部に向いているように感じます。些細な気づきが他の人にも共有できる大事な情報だったりもしますので。例えば、TVやネットのニュースを注意深く見るとどれも画一化されています。でも、見方を変えたらそれらは本来全く異なるものだったりします。そんなふうに疑問を持てる人は、この分野の勉強を楽しめると思います。こうしたことをユーザーにわかりやすく、実感を持って情報を受け止められるデザインを考えていける人を待っています。

些細な気づきができる人、社会の先駆者を輩出

貴重なお話ありがとうございました。
(本ページの内容は「学びのすすめ_芸術系」と同内容です。)
(本記事は2021年2月に取材・撮影した内容をもとに制作しています。)

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