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高校生イラストコンテスト2019 最優秀者インタビュー vol.4

④デジタルのこと

――今の時代、IT、AIなどいう話題もよく出ています。普段皆さんが絵を描くのに使っているのはアナログ素材、絵具や色鉛筆などが多いと思いますけれども、デジタル素材、パソコンのソフトやスマホのアプリとか使って作品を描いている方はいらっしゃいますか。

上野 たまにですけど使ってます。

――使ってみた感じとして、アナログ素材と比べてどう違いますか。

上野 仕上がりとか、見た目とか、描き心地とかですね。

――自分の納得が出来るとか、感情が入りやすいとかも含めてお願いします。

上野 わたしは機械音痴なので、描くならアナログがいいんです。でも、デジタルって修正がすごく利く。描いた線をボタン一つで元に戻せるし、加工ができる。だからすごくいい感じに出来るんです。でも、それって自分で描いたんじゃないし、色も自分で作ったんじゃないしって、ちょっと疑問を抱く時もあるんです。確かにアナログの絵って、描いた線は消しゴムで消したり、自分の手で直さないといけないので手間がかかります。これ(作品)は絵具で描いた絵なんですけど、自分で作った色でしか表現が出来ないし、加工が利かないから、塗った色そのまんまなんですよね。
一方、デジタルの登場によって世界が広がったと思うんです。でもやっぱり、アナログでしかできないこともあるので、どっちも発展していけばいいと思います。デジタルでしか出来ないことも沢山あって、線をきれいに描くとか、きれいにグラデーションを付けるとか、速く描けるとか。表現の幅がデジタルによって広がったとは思うんです。でも、それによってアナログの価値が下がるとか、需要がなくなることはないから、それぞれの価値を高め合うチャンスだと思っています。

――さんぽうの美術会場で長年取ってきた進路調査アンケートの希望分野を見る限りでは、もう何年もファインアートの割合が変わっていません。油絵の希望者とか、日本画の希望者とかは、ある一定の割合のまま変化していないのです。今後、さらに環境が変わっても同じかどうかはわかりませんが、数字上アナログの価値は現時点において安定していると言えるのかもしれませんね。
ところで、アナログとデジタルの違いの中で経年による変化の有無というのもありますよね。さきほど、上野さんの今回の絵で水彩絵具を盛っているという話がありましたが、何年か経った時に、ひび割れてくることもあると思うのですけど、そういうことって作品を描かれる時に想定していますか。

上野 あんまり考えてなかったです。4歳の時に描いたクレヨンの絵を、今でも部屋に飾ってあるんですけど、紫の色が飛んでいるんですよ。でも、それはそれで悪くないって。時が経つにつれて味が出る。それって時が経つことでしか起こらないじゃないですか。そういうのも含めてアナログには魅力があると思います。

――なるほど。古い建築物や美術品が最新の分析技術などを駆使して修復された後に見ると、つくられた当時は今見るのとは全然違っていて極彩色だったみたいなことも少なくありませんよね。私達がお寺などで現在見ているそれらは色が褪せていて、なんかこうモヤっとした感じでそれが落ち付いたいい味を出している印象だから、本来はそうであったのかもしれないけれども着色されてしまうことで逆に違和感を覚えたりもします。変化もまたアナログの魅力なのですね。
お二人にもデジタルについてどう思うか聞きたいのですが、いかがですか。

山田 マンガとかすごく身近なんですけど、やっぱりデジタルで描かれたマンガと、アナログで描かれたマンガって、読んでいても違う感じがします。さっき上野さんが言っていたみたいに描く側の意識や都合なんかも関係しているのか、全然違う。アナログでしか出来ないことと、デジタルでしか出来ないことがあるので、さんぽうの進学相談会のアンケートでのファインアートの志望者の割合が変わってない、比率が変わっていないっていうのは納得出来ました。あと、フォトショップとかを使って授業を受けることがあるんですけど、提出とか説明とかがすごく楽なんです。だから、沢山の人に見てもらうとか、速く伝えるっていうのはデジタルがいいなって思いました。

片神 アナログだと一点モノになるじゃないですか。どんなものに、何を使って、いつ、どこで、誰が、何のためにその作品を作ったのかまで全部で考えると、複製は絶対出来ないものだと思うんですよ。でもデジタルはまったく同じものが作れてしまう。一点モノって大事にするじゃないですか。欲しいおもちゃがあったとして、それを買ってもらえた時って、そこに込められた色々な思いも含めるとこの世に一個しかないからすごく大事にするじゃないですか。世界的絵画のモナリザとかもすごく大事にされていると思うんですけど、それはアナログだからだと思うんです。だからなんか、美術的価値っていうのはアナログが基本だし、でも、デジタルで世界に広めることの出来る作品を作るっていうのがすごく重要にされている世の中になっているので、同時に大切にしていくべきなのかなあって思います。

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